旧萌尽狼グ

同人音楽サークルkaguyadepth代表、萌尽狼(もえつきろ)の個人ブログ ※更新終了

僕が語れるゲーム音楽史(その1)

§1 ゲーム音楽の基礎知識

 ゲーム音楽史を紐解く前に、ゲームにおける音楽の役割をざっと見ていこう。

§1-1 ビデオとゲームの違い

 ビデオは時間軸に沿って記録された映像・音声が再生されるメディアである。※
 これに対し、ゲームはプレイヤーの操作に応じて映像・音声が変化するメディアである。


※ランダムアクセスによって異なる場面をつなぎ合わせ、ビデオにゲーム性をもたせたものにLDゲームやDVDPGなどがある。

§1-2 場面転換

 『スーパーマリオブラザーズ』では、土管に入って地下に行くと曲が変わる。
 『ドラゴンクエスト』では、城を出て街に行くと曲が変わる。
 曲が変わることによってプレイヤーに場面転換を知らせる役割を果たしている。

§1-3 時間

 『スーパーマリオブラザーズ』では、残り時間が100秒を切ると警告音が鳴り、曲のテンポが速くなる。
 一方『ドラゴンクエスト』では、画面では昼~夜の変化はあるが、曲の変化はない。
 時間と音楽の関係性については、アクションゲームとアドベンチャーゲームで異なる。

§1-4 アクションゲームとアドベンチャーゲーム

§1-4-1 アクションゲーム

 アクションゲームは概して、プレイヤーキャラクターを操作して、より多くの敵を倒し、先のステージに進むことによって、ハイスコアを競い合うゲームである。
 アクションゲームには、シューティングゲームパズルゲームなどが含まれる。


 アクションゲームは画面の遷移によって大きく3つに分けられる。

  • 固定画面
  • 任意スクロール
  • 強制スクロール

 『スーパーマリオブラザーズ』は任意スクロールである。海外では『パックマン』のような固定画面のアクションゲームは区別されている。


 アクションゲームはおおまかに次のような場面で構成され、曲が変化する。

  • ステージ
  • ボス
  • ステージクリア
  • ボーナスステージ

 『究極タイガー』や『ダライアス外伝』など、ステージとボスで曲が変化しないゲームもある。


 アクションゲームでは「永パ防止」といって、スコアを稼ぎ続ける行為(永久パターン)を防止するため、時間制限を設けたり、ボスが自爆したり、おじゃまキャラが出現したりする。

§1-4-2 アドベンチャーゲーム

 アドベンチャーゲームは、テキストを読み進め、選択肢によってストーリーが分岐するゲームである。パラメーター管理が重要で、「フラグが立つ」といった言葉も一般的になった。
 アドベンチャーゲームには、RPGシミュレーションゲームなどが含まれる。


 RPGはおおまかに次のような場面で構成され、曲が変化する。

  • フィールド
  • ダンジョン
  • バトル
  • ボスバトル
  • レベルアップ


 また、ストーリーの展開にそって、心理描写を曲で演出することが多いのも、アドベンチャーゲームの特徴といえる。

§1-4-3 アクションRPG

 アクションRPGは、アクションゲームとアドベンチャーゲームが混在したゲームである。
 こんにちのゲームの多くは、ストーリーモードがアドベンチャーゲームに該当し、アクションRPGのようにアクションゲームとアドベンチャーゲームが混在したゲームであると言える。

§2 トレンド音源の変遷

 ゲーム音楽史を語るうえで最も重要視されるのが音楽的な表現力を左右する音源である。
 ゲーム音楽から派生したチップチューンという音楽ジャンルを知るうえでも、重要な知識となってくる。


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§2-1 ブザー音

 『スペースインベーダー』などの初期のアーケードゲームや、『たまごっち』などのキーチェーンゲームに入っている音源である。
 『ポケモンミニ』のように音量によって音色が変化する機種もある。同時発音数は1音で、モノラルである。
 主に効果音を鳴らすための音源であるが、単音のBGMに効果音を割りこませることで、あたかも複数の音が鳴っているように聞こえるゲームもある。
 余談ではあるが、整形外科で理学療法(電気治療)を受けるとブザー音天国であり、往年のゲーセン気分を味わうことができる。

§2-1 PSG

 ブザー音が同時に3音鳴る音源である。音色は矩形波(いわゆるピコピコ音)とノイズである。
 セガPSG(DCSG)はノイズが独立しており4音鳴る、ファミコンRP2A03)は音色が変えられるなど、いくつかの類似音源が存在する。

§2-2 波形メモリ音源

 コナミのSCC、ナムコPSGとして有名。PSGとの違いは、任意の波形を鳴らすことができる点である。
 発音数は機種によって異なる。PSGと組み合わせて使われることが多かった。
 ファミコンディスクシステムPCエンジンワンダースワンなどに搭載されている。

§2-3 FM音源

 ヤマハシンセサイザーDX7に搭載された音源である。金属的な音色が特徴的。
 ゲーム機用の音源チップは複数あり、価格によって性能もさまざま。
 PSG互換のSSG、PCM、リズム音源を内蔵したものもある。
 音色を作るのが難しく、ゲームメーカーやクリエイターによって個性がはっきり出た音源だ。

§2-4 PCM

 サンプリング音源。リアルな音色が特徴的。
 初期はドラムや効果音としてPSG、波形メモリ音源、FM音源と組み合わせて使われた。
 スーパーファミコンでフルPCMとなり、以降のゲーム機はほぼこの音源を採用。
 チップの性能やメモリ容量によって音の明瞭さや発音数が異なる。

§2-5 CD-DA

 CD-ROMに記録されたオーディオトラック、つまり音楽CDそのものである。
 PCエンジンCD-ROM2で初めてゲームに採用され、プレイステーションセガサターンまで使われた。
 高音質である反面、ディスクアクセスでゲーム進行が一瞬停まったり、ポーズ中も音楽が流れっぱなしになる非連動性が問題である。
 また、『首領蜂』などサイトロンのサントラCD流用によるループ切れのいい加減さも目立つ。
 メモリ容量が増えるとゲーム中にディスクアクセスがなくなり、途中で他の音楽CDと交換可能な『リッジレーサー』などが話題に。

§2-6 MIDI音源

 SMF(スタンダードMIDIファイル)に記録された音楽をMIDI規格に対応した音源で再生。
 MIDI音源には、外部音源、パソコン内蔵のサウンドカード、ソフトウェア音源などがある。
 外部音源の代表的なものはRoland MT-32、SC-55SC-88Proなど。
 外部音源に対応したゲームはX68000というパソコンで数社から発売されていた。
 パソコン内蔵のサウンドカードを鳴らすものはWindows95以降のゲームに多く、現在でもRPGツクールなどで使われている。
 ソフトウェア音源はゲームと同時に処理するには負荷が高いためあまり一般的ではないが、『ファイナルファンタジーVII』の海外PC版にヤマハのソフトウェア音源が同梱され話題になった。
 MIDI音源GMマップと呼ばれる128音色+1ドラムセットの各社共通の音色があり、これを独自拡張したのがRolandのGS、ヤマハXGである。
 WiiにはWindows標準相当のGS音源が内蔵されており、一部のゲームで利用されている。

§2-7 ストリーミング

 WAVなどの非圧縮オーディオやMP3・Oggなどの圧縮オーディオを再生。
 『レゾン』などの短いループサンプリングを含めるとその歴史は意外にも古い。
 CD-DAと比べるとディスクドライブが不要でループが途切れずに再生可能な点が特徴。

編集後記