ガルパンの『ハイレゾオーディオ道、はじめます!』は「ハイレゾ道」のプロパガンダ誌だった
ハイレゾオーディオ道、はじめます! (Gakken Mook)
- 作者: 学研パブリッシング
- 出版社/メーカー: 学研マーケティング
- 発売日: 2015/09/29
- メディア: ムック
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これに先立って9/29に発売された本誌は、ガルパンファンに「ハイレゾ道」という新ワードを刷り込むためのプロパガンダであった。
つまり、このコンサートと本誌は切っても切れない間柄であり、コンサート終了後ではあるが、今一度本誌にきちんと目を通しておく必要があるのではないかと思った。運良く地元書店で入手出来たが、アニメ誌でもオーディオ誌でもない微妙な立ち位置のため、秋葉原ではついに見つけることが出来なかった。
パッと見はていねいな作り
こんにちの出版業界はよりニッチな方向を狙って金脈を掘り当てようとしている。オタクはより良いものを求める傾向にあるから、音楽もハイレゾならよりクオリティの高いものが聴けるということを知ってもらえば、アニメ業界もオーディオ業界も潤い、その仲人をすれば出版業界も潤うというビジネスが、ハイレゾ道の正体だ。この内容で500円という価格から考えても、メーカーから広告記事としてお金が出ているのは間違いない。
本誌の大部分をオーディオ機器の紹介記事が占めているが、これは戦車に置き換えて考えるとわかりやすく、ガルパンファンが興味を引きそうな順に記事が組まれている。なので、ガルパンの本なら戦車がたくさん載っている本のほうが楽しいわけで、オーディオ機器が手の届きそうなポータブルオーディオ(軽戦車)からネットワークオーディオ(重戦車)までうまい具合にレイアウトされている。
この戦車は大洗女子学園の戦車なので、要は売れ残りの寄せ集めなのだ。つまり広告費を出してくれるメーカーのものであればよく、よりよいものを紹介しようと言う意図はあまりない。ただ、IV号戦車のような花型は必要なので、おさえるべきところはきっちりおさえてあるといった具合だ。なので、オーディオマニアが見れば「こんなんでよく金が取れるな」と思うような記事になってしまうが、それでいいのだ。
むしろ、秋山優花里などのキャラクターが出てきて紹介するような記事になっていなかったことに感謝すべきだろう。下手に秋山殿が知ったかぶって語ろうものなら、キャラクターに泥を塗りかねないからだ。
「オーディオ専門店へ行こう!」はまさに「せんしゃ倶楽部に行こう!」のノリなので、地方の人のことなんかまったく配慮されてない。むしろ東京には専門店がたくさんあるんだと思わせられればシメたものだ。
第2章から先が肝心なんじゃないか、という意見もあると思うが、
大丈夫よっ! 戦車なんてバーッと動かして ダーッと操作して ドーンと撃てばいいんだからっ!!
って人達にハイレゾ音源の仕組みだの、どのサイトからハイレゾ音源を買えばいいだの、そんなことをくどくど説明しても意味がないのである。
冷泉麻子も「マニュアル通りになんとなくやればできる」とおっしゃっている。
ガルパンサントラをCDとハイレゾで聴き比べる
さて、本誌はガルパンのハイレゾ道のプロパガンダであるから、ハイレゾのガルパンを体験しなければ、本誌の意図を理解したことにはならない。
つまり、本誌P.10“オーディオ評論家・鳥居一豊さんが語る「ハイレゾなら『ガルパン』の世界にもっと浸れる」”に書かれてることが本当かどうか、この耳で確かめる必要がある。
その前に、当方のハイレゾ再生環境について、いずれも本誌では紹介されていない機材なのでフォローしておく。
ZOOM UAC-2(USB3.0 DAC)
- 出版社/メーカー: ZOOM(ズーム)
- 発売日: 2015/04/30
- メディア: エレクトロニクス
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USB3.0の低レイテンシーを従来品に比べゼロの桁がいっこ違う低価格で実現したUSB DAC。USB3.0の空きポートを活用するにはうってつけの機材。
音楽制作用なので単にハイレゾ再生用としては不要な機能も多いかもしれないが、高級感がありプロ用機材っぽいルックスも大きなポイントと言える。
TAPCO MIX60(アナログミキサー)
MACKIE ウルトラコンパクトミキサー MIX.60 MIX60
- 出版社/メーカー: MACKIE
- 発売日: 2007/07/12
- メディア: エレクトロニクス
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現行商品だとMACKIE. MIX8が近い。
MACKIE マッキー 超コンパクトアナログミキサー MIX8 国内正規品
- 出版社/メーカー: MACKIE
- 発売日: 2015/07/29
- メディア: エレクトロニクス
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ZOOM UAC-2のヘッドホンアウトが決して悪いわけではないが、個人的にMACKIE.の音が好きなのでMACKIE.のミキサーを通して聴いている。*1
PreSonus HD7(ヘッドホン)
- 出版社/メーカー: PreSonus
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DAWソフト「Studio One」のPreSonusがUSBオーディオインターフェースのオマケとして配っていたものなので、誰も期待していなかったがあまりにいい音だったので愛用者も多い。単体販売もしている。
AKGに似たデザインのヘッドホン。セミオープン型。再生周波数帯域は10Hz~30kHzで決してハイレゾ対応とは言いがたいスペックではあるが、低価格で必要十分な性能を誇る。
MusicBee(メディアプレーヤー)
http://www.forest.impress.co.jp/library/software/musicbee/(窓の杜)
リサンプリング機能も備えハイレゾ再生に必要な機能は全て揃っている。バージョンアップも頻繁で、最新版(Ver.2.4以降)ではSoundCloud内の音声ファイルを検索・再生できるようになった。
むしろ本誌ではなぜfoobar2000を紹介したのだろう?
MusicBeeなら日本語化の必要もないし、FLACエンコーダーやWASAPIプラグインのインストールも必要ない。
あまつさえfoobar2000の設定に終始していて画面の説明がないから、初心者にはなんのこっちゃさっぱりわからないのはハイレゾオーディオ道としては道義に反しているのではないか?
では、実際にe-onkyo musicからハイレゾ音源をダウンロードして聴いてみた感想だ。
CD(44.1kHz/16bit)は締りのある低音、ハイレゾ(48kHz/24bit)は豊かな低音であり、どちらが優れているというものではない。ハイレゾは大太鼓の存在感がはっきりしているが、リリースも長くぼわーんとした低音が長くとどまる。ダイナミックレンジが広いことで音の立体感は上がっているが、コンプ感もはっきりしてしまうため、生楽器でありながらスタジオで作られた音であることもまたはっきりしてしまう。
面白いのはTr.9「戦車の知識では誰にも負けません!」のシンセで打ち込まれたピッコロのベロシティ(強弱)の違いがハイレゾでははっきりわかることだ。ただ、Tr.7「転校してきて良かったです!」はベルリラ(マーチングで用いられるグロッケンシュピールの一種)のリリースが途中でぶった切られてしまっているのでマイナスだ。こういう細かい処理は波形編集ソフトで拡大してきちんとしてもらいたい。
Tr.27「開会式です!」から先の展開はハイレゾの方がケタ違いに熱い。音の迫力に圧倒され、没入感がハンパない。ただ、金管のフォルテシモの音の粗さも目立つようになる。
Tr.38「それゆけ!乙女の戦車道!!Wind Orchestra ver.」(CDではDisc2 Tr.1)の印象がだいぶ違う。CDではちょっと浮いた存在だった曲だけに驚きもひとしお。ボーカルもあるので、Disc2に入ってからのほうがハイレゾの特徴が出ている気がする。
ハイレゾとはいえ48kHz/24bitなので正直あまり期待していなかったが、量子化ビット数の違いがこれほどまでに表現の差を生むとは思わなかった。
結論としては、このコラムに書かれていることは概ねその通りで、あまり「盛ってある」印象は受けなかった。やられたね!
Pioneer XDP-100R-K ガールズ&パンツァーモデルについて
本誌にこの機種の紹介記事はないが、これだけ多くのハイレゾオーディオ機器を一度に見せられて、ひとつに決めきれなくなったガルパンファンに「こんないいものが新発売ですよ」とうまい話を持ちかけてきたわけである。
価格帯もChouChoさんがインタビュー記事でお使いのアステル&ケルン AK Jrと揃えてきたあたりも意図的であるし、Android OSだからようやくリリースされる『ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!』も遊べるという伏線付きだ。ぜーんぶちゃーんとつながってるんですよ。汚いわあ! 日本戦車道連盟汚いわあ!!
ちなみに私はXperia Z5に機種変更することになってしまったのでこの機種はスルーします。
Pioneer デジタルオーディオプレーヤー ハイレゾ音源対応/Google Play対応 ブラック XDP-100R-K
- 出版社/メーカー: パイオニア
- 発売日: 2015/11/30
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