旧萌尽狼グ

同人音楽サークルkaguyadepth代表、萌尽狼(もえつきろ)の個人ブログ ※更新終了

『シン・ゴジラ』のヤシオリ作戦から紐解く、八塩折之酒と八岐大蛇伝承地

シン・ゴジラ』では、ゴジラが体内に有する生体原子炉が主に血液流で冷却していると考えられることから、巨災対は血液凝固促進剤の経口投与による体内冷却システムの強制停止を狙う「矢口プラン」を発案する。
この「矢口プラン」は自衛隊の「ゴジラの活動凍結を目的とする血液凝固剤経口投与を主軸とする作戦」を経て、「ゴジラ凍結作戦というのも子供っぽい」という理由で「ヤシオリ作戦」に名称変更される。

「ヤシオリ作戦」は一般に、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第六話「決戦、第3新東京市」で第5使徒ラミエルを倒すための「ヤシマ作戦」と語感が似ている点で話題となっているが、『シン・ゴジラ』監督の樋口真嗣が総監督の庵野秀明と出会うきっかけになった1984年版『ゴジラ』の後、特技監督として参加したデビュー作がDAICON FILM(後のガイナックス)の『八岐之大蛇の逆襲』(監督:赤井孝美)であったことも留意すべき点である。

この「ヤシオリ」という耳慣れない語は、『日本書紀』で須佐之男命スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するために造らせた「八塩折之酒」(ヤシオリノサケ)に由来するのだという。
「塩折」とは水の代わりに酒を使って仕込む日本酒の古式製法で、糖化したもろみに酒をかけて絞るため、もろみの糖分はあまりアルコ-ル醗酵せず甘みを含んだ状態の酒になるというもの。
その発酵法を「八」すなわち「何度も繰り返す」ため「八塩折之酒」は甘くて濃厚な飲みやすい酒になるのだという。

ぶどうを発酵させアルコール発酵が完全に終わる前に、まだ糖分を残した状態でブランデーを添加して発酵を止めた、フランス西部シャラント県でつくられる甘口の酒精強化ワイン「ピノーデシャラント」がこれに類似する。
つまり長谷川博己演じる矢口蘭堂がワイン好きだったなら、頭のなかで「八塩折之酒」が「ピノーデシャラント」にすり替わって「ピノーデシャラント作戦」になっていた可能性もあるわけだ。

さて八岐大蛇伝説といえば私が今住んでいる島根県だ。
島根県東部を流れる斐伊川は、天井川で昔からたびたび洪水が起こっており、これが八岐大蛇伝説の元になったといわれている。

「八塩折之酒」は松江市の国暉酒造や、雲南市の室山農園によって再現されているが、特殊製法のため限定醸造であり、入手は容易ではないようである。
ウェブ上の情報も古く、現行商品かどうかすらも怪しい。どうも2012年の神話博しまねに合わせて造ってみたはいいものの、高級酒なので土産物として定着しなかった気がする。
イオンモール出雲1階のだんだん横丁など、出雲市内で地酒の品揃えに強そうなスーパーをいくつか見て回ってみたが取り扱いはなかった。
直江駅前のおちらと槙野酒店など近所に酒に詳しい店もあるのだが、ふだん酒を飲まないので、酒屋に行くのは気が引ける。

ただ、名古屋市にこの春オープンした立ち飲みバー「むぎコメぶどう ヤシオリ」など、「八塩折之酒」にちなんだ酒が飲める店は他にもあるようなので、名古屋の『シン・ゴジラ』ファンはチェックしてみて!
ameblo.jp

また、雲南市には八岐大蛇伝承地が数多くあり、いくつかヤシオリ作戦に当てはめると次のようになる。

  • 「印瀬の壺神」は印瀬の八口神社の境内にある八塩折之酒を入れた八つの壺のうちのひとつなので、「特殊建機小隊のタンクローリー車」に当てはめることができる。
  • 「釜石」は御室山の山麓にある八塩折之酒を造らせた釜跡なので、「筑波の血液凝固剤工場」に当てはめることができる。
  • 草枕」は八塩折之酒を飲んだ八岐大蛇が枕にして寝た山なので、「東京駅」に当てはめることができる。

ヤマタノオロチ伝承地を巡る | 雲南市

雲南市は『シン・ゴジラ』とは全く無関係だが、『シン・ゴジラ』の「ヤシオリ作戦」をきっかけに八岐大蛇伝承地を訪れてみるのもいいかもしれない。
アクセスにはJRトロッコ列車「奥出雲おろち号」が便利。8月中は毎日運行される(ただし出雲市駅片道延長運転日は土日と8/11のみ)。
www.hiikawa-summit.info