ファミコン用東亜プラン風ヘリSTG『プレジデントパニッシュ(仮)』クラウドファンディングの疑問点
『プレジデントパニッシュ(仮)』クラウドファンディングは5/25に募集開始。5/30発売の『シューティングゲームサイドVol.12』誌上で発表され、元東亜プランのプログラマで本プロジェクトにもサウンドで参加している上村建也氏もTwitter上で呼びかけるなどしているが、7/31の募集終了が迫っているにもかかわらずイマイチ盛り上がりを見せていない。
【応援求む】現在画策中の『プレジデント・パニッシュ(仮)』はファミコンで動く8bitゲーム。これを同人で終わらせず、量産して商品化したい!という野望のもと、皆さんの応援を絶賛募集中!実現出来たらファミコン終了後史上初の新作ゲームになる!http://t.co/GK3RMBdzFa
— 上村建也 (@u_brand_) June 4, 2015
ファミコン終了後の新作ソフトとしてロムが市販化されたものとしては2007年の『ミスタースプラッシュ!』があり、2013年の『キラキラスターナイト』も記憶に新しいが、シューティングゲーム(以下STG)としては史上初になるのだろう。
私も『空中戦車道』というガルパン風ヘリSTGオンリーアレンジCDを制作しており、ヘリSTGの新作ということで資金援助したいのはやまやまなのだが、いくつかの疑問点があり躊躇している。本記事では募集記事を引用しつつ、まずその疑問点を整理してみたい。
疑問1:東亜プランリスペクトでファミコン?
私は小学生の頃、友達が持ってきたファミコンの『ジャイロダイン』を見てSTGに興味を持ち、親にねだって買ってもらったのがファミコンの『究極タイガー』という経歴の持ち主。ネット上ではよい評価が少ない『究極タイガー』だが、ファミコンSTGとしては歯ごたえがあり十分遊べる内容だったので長く遊べた。
ここで東亜プランSTGの歴史を振り返るとともに移植機種をまとめる。メガドライブの『武者アレスタ』はコンパイル開発なので除外したが、ヘリSTGの原点である『ジャイロダイン』は東亜プランの前身、クラックス開発なのでリストに含めてみた。
ゲームタイトル | AC発売年 | 移植機種 |
---|---|---|
ジャイロダイン | 1984 | FC / MSX / PC-88 / X1 / PS2 |
タイガーヘリ | 1985 | FC / PS |
スラップファイト | 1986 | MD / Let's! TVプレイ CLASSIC |
飛翔鮫 | 1987 | X68000 / FM TOWNS |
究極タイガー | 1987 | FC / PCE / MD / PS / X68000 / FM TOWNS |
TATSUJIN | 1988 | MD / PCE |
ヘルファイヤー | 1989 | MD / PCE |
大旋風 | 1989 | MD / PCE |
ゼロウイング | 1989 | MD / PCE |
鮫!鮫!鮫! | 1989 | MD |
アウトゾーン | 1990 | ― |
ヴィマナ | 1991 | ― |
ドギューン!! | 1992 | ― |
達人王 | 1992 | FM TOWNS |
フィグゼイト | 1992 | ― |
ヴイ・ファイヴ | 1993 | MD |
BATSUGUN | 1993 | SS |
このように『ジャイロダイン』『タイガーヘリ』『究極タイガー』と『プレジデントパニッシュ(仮)』につながる東亜プランのヘリSTGはいずれもファミコンに移植されているものの、以降のタイトルはメガドライブかPCエンジンに移植されていて、ファミコンには移植されていない。
また、このうち上村建也氏がプログラム・サウンドを手がけたのは『タイガーヘリ』『飛翔鮫』『究極タイガー』『ヘルファイアー』『ゼロウィング』『アウトゾーン』『ドギューン!!』で、ファミコンに移植されたのは『タイガーヘリ』と『究極タイガー』だけ。『飛翔鮫』はNES(北米版ファミコン)に移植されていてティム・フォリンがサウンドを手がけたことで知られているが日本では未発売だ。
こうして考えてみると、東亜プランリスペクトの新作STGをファミコンで作ることにいささか疑問を感じる。FC互換機に比べれば手軽に入手できないものの、GAME JOY、PocketMD MD-360、MDアダプター、RetroN 5、レトロフリークといったMD互換機が流通していることを考えると、対象プラットフォームはメガドライブでもよかったのではないか?と思うのだがどうだろうか?
疑問2:ファミコンでどの程度のクオリティを目指しているのか?
『サマーカーニバル'92 烈火』はムリだとしても同じファミコンのヘリSTGだと『究極タイガー』の移植版と同等かそれ以上のクオリティを期待している人が多いのではないか?
それ以下だとがっかりすると思う。『ビッグチャレンジ!ドッグファイトスピリット』とか。
あくまでファミコン現役当時のテイストを重視した懐かしい感じで作る、というのであれば、早めにゲームのイメージを伝えていただけると安心できるのではないか?
引き合いに出すなら『ザナック』とか『スターソルジャー』とか。
同人でハードのスペックを極限まで引き出したすごいゲームが多いので、過剰に期待してしまう人が多く、情報が明らかにされていない現状に不満か、不安視するのは仕方ないと思う。
なのでまずは開発の方向性を具体的に示して欲しい。
疑問3:制作期間は3~4ヶ月で大丈夫か?
デバッグやゲームバランスの調整に時間を割くべきでは?と思うのだが…
疑問4:ゲームソフトの一般販売は予定されているのか?
市販されるのであれば、将来を見越して投資したいと考える方も多いだろう。
また、ゲームショップ等がスポンサーに付く可能性も考えられる。
疑問5:ケースに貼るシールもないのか?
ロムソフトのケースはジャンクのファミコンソフトを流用すればよいのだろう。
箱やシール等の自作に必要な高解像度の画像素材(ロゴ・イラスト等)が出資者には提供される、といった文言が含まれればよいのだが。
疑問6:ロムソフト+サントラというチケット設定がないのはなぜか?
A(サントラCD)+B(ロムソフト)で15000円なのに、15000円のチケットはロムソフト+ライブパーティーなのはなぜか?
おそらくロムソフト+サントラCDで15000円だったら出資してもよいと考える人は多いと思われる。
ロムソフト+サントラCDが欲しければEの20000円のチケットになる。要はライブパーティーが邪魔。
ライブパーティーには地方の人は参加が難しい場合があり、出資が躊躇われる要因となりうる。
疑問7:F.30000円の「タイトル画面に名前入」はなぜタイトル画面?
タイトル画面じゃなくてエンディングがいいっていうか出資者なんだからクレジットに記載してほしいよなぁ。
タイトル画面だとこの世に一つしかない出資者のためのソフトであるというプレミア感はあるし、転売対策にもなると思うが…
疑問8:上村建也氏はプログラムにはノータッチ?
プログラマが明らかにされていないのはなぜなのか?
同人等でファミコンシューティングに実績のある方が担当されるのか、それとも…?
東亜プランリスペクトということは「自機狙い高速弾と、ザコと中型機が織りなすパズル的な攻略を要求されるゲーム性」をうまくプログラミングできる人が望ましいのでは?
そこらへんを上村建也さんが監修されるというのであれば安心なのだが…
また、上村建也氏の音楽は上村建也氏自身が打ち込まれるのか?
ファミコン界隈ではチップチューンが盛り上がっているので、音楽のデキも気になるトコロ。
疑問9:問い合わせメールアドレスが不通?
本記事で取り上げた疑問点を募集記事に記載されているメールアドレスに送信したら戻ってきてしまった。上村建也氏にリプライで疑問を投げかけても迷惑をかけるだけだろう。いったいどこに問い合わせればよいのか?
2015年7月10日追記
ハッピーミール株式会社様よりメールアドレスが間違っていたと連絡がありました。
誤:appymealsupport@bonusstage.net
正:happymealsupport@bonusstage.net
おわりに
『プレジデントパニッシュ(仮)』クラウドファンディングは、「東亜プラン社のシューティングゲームをリスペクト」って言っちゃって自らハードル上げちゃってるよなぁ…
単にファミコンでヘリSTG作ります、上村建也さんが音楽やります、では引きが弱かったとしても、リスペクトというからには地上敵が多いとか、そういうゲーム内容になるのかなと漠然と想像する人は多いだろうし、実際『スノーブラザーズ』では東亜プラン自社でファミコンソフトの開発もやっていたから、歴史のifを期待する向きもあるだろう。
『阿修羅ブラスター』など究極タイガー亜種と呼ばれるゲームも多いので、リスペクトってどのくらい?と思ってしまったのだった。
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